カリウム恒常性
体内総カリウム量と血漿カリウム濃度を維持すること
調整機構は外部(腎臓でのカリウム排泄量の調整)と内部(細胞内・外の非対称分布の調整)に分けられる。
外部システム:腎臓でのカリウム排泄量の調整
「反応型」
- 負のフィードバックシステム
血漿カリウム濃度の変化に反応し、腎からの排泄が促進される。 - フィードフォワードシステム
経口摂取したカリウムが血中濃度を上昇させなくても、経口カリウム摂取量に反応して、カリウム利尿が誘導される。
「予測型」
- 予測システム
中枢の視交叉上核によるcircadian clockが腎臓の尿細管細胞の時計遺伝子を制御し、排泄量を時間帯ごとに調整する。
例:人では日中にカリウム排泄量が最大(正午付近)、夜間に最小(深夜)となり、排泄変動は2~4倍に及ぶ。
内部システム:ポンプ-リーク動態
細胞内液と細胞外液の間で体内のカリウムの非対称な分布を維持する
- Na-K-ATPase(ナトリウム-カリウムポンプ)
細胞外→内への能動的な取り込み - Leak channels
細胞内→外への受動的な流出
により制御される。
補足:臨床的意義と注意点
- インスリン、カテコールアミン、アルドステロンにより細胞内取り込みが促進される
- インスリン投与などによる急激な細胞内シフトは、実際には総カリウム量が変化していなくても重度の低K血症を呈することがある(例:周期性四肢麻痺)
- 無作為な尿検体でのカリウム排泄評価は時間帯によるばらつきが大きいため、臨床的には慎重な解釈が求められる。
参考文献
- An Integrated View of Potassium Homeostasis
N Engl J Med 2015;373:60-72